千葉大学医学部 小児病態学免疫アレルギーグループからのお知らせ

【お知らせ(2014年6月)】

本研究も、おかげさまで300名弱の参加をいただき現在おおむね順調に進んでおります。

2歳での検査は2014年3月に修了し、参加者の様々なご協力に深く御礼申し上げます。

この調査では非常に多岐にわたる解析を行っており、現在解析中のものもありますが、解明されたこともいくつかあります。研究結果は第3者による評価を受けて最終的に論文として世の中にでるものです。本研究の結果については学会での発表はしておりますが、論文化はこれからです。

しかしながら、参加者への情報提供は可能な範囲で行いたく、ここでは論文化される前の暫定的な結果評価について簡単にお知らせ致します。

中間的解析であることを何卒ご了解いただければと存じます。

 
1歳、2歳でのアレルギー疾患の有病率
  アトピー性
皮膚炎
食物アレルギー アレルギー性
鼻炎
喘 息
1歳 15.2% 8.2% 1.8% 調査せず
2歳 18.4% 10.2% 3.5% 6.3%

アトピー性皮膚炎のお子さんは1歳、2歳とも10数%おられました。食物アレルギー(大部分が卵)は10%くらいでした。アレルギー性鼻炎はこの年齢ではまだ少なく、1歳でスギ花粉症のお子さんはいません。

喘息の診断は簡単ではないのですが、2歳で医師から喘息と言われているお子さんは6%でした(1歳では診断が難しいため調査をしていません)。

統計学的な解析からアトピー性皮膚炎の発症には男児であること、生後6か月までの湿疹、完全またはほとんど母乳栄養、6か月での頬部の黄色ブドウ球菌の存在、この4つが関連していました。

 
1歳、2歳での感作
※感作:アレルギーを引き起こす1つ前の準備の段階の状態
  卵 白 牛 乳 ダ ニ ネ コ ス ギ
1歳 33.2% 13.1% 6.7% 3.0% 0%
2歳 30.7% 18.3% 25.3% 3.5% 3.5%

1歳、2歳とも卵白に対する感作(IgE抗体ができること)が最も多い結果でした。ただ、卵白に対するIgE抗体があるからといって卵アレルギーというわけではなく、実際にはIgE抗体が陽性だったお子さんの1/4程度(全体では10%未満)が卵アレルギーと考えられました。

感作があっても、症状がない場合には食べ続けてもらう方がいいということは検査結果通知でお知らせしてある通りです。

ただ、卵白に対するIgE抗体が陽性になることが卵アレルギー発症の必要条件ですので、どのような因子が1歳での卵白感作に関連しているのかを統計学の手法により解析しました。

その結果、6か月時までの顔面の湿疹、完全またはほとんど母乳栄養、母親のアレルギー疾患、6か月での頬部の黄色ブドウ球菌の存在、の4つが1歳時での卵白感作に関連することがわかりました。

このように、アトピー性皮膚炎と食物感作に関連する因子が共通していることは、アトピー性皮膚炎と食物感作が強く関連していることを示唆しています。

現在、アトピー性皮膚炎があるお子さんの皮膚から母乳中の卵成分が体に入って感作につながるのではないかと考えています。乳児湿疹の予防や早期の治療などで感作を減らすことができるかもしれません。今後、食物に対する感作、食物アレルギーの発症の予防等に役立つ情報と考えられます。

またダニ感作は1歳では少ないのですが、2歳では1/4のお子さんが陽性になっています。ダニ感作はアレルギー性鼻炎、気管支喘息の原因になりますので、陽性になったお子さんでは今後の注意が必要と思います。スギ陽性になったお子さんも少数ですがいらっしゃるので親御さんにスギ花粉症がある場合には春先に気をつけていただければと思います。一般的にはスギに対する感作が陽性になって2年ぐらいで花粉症症状がでやすいと言われています。

 
寝室のほこりと1歳、2歳でのダニ感作

この調査では生後3か月と1歳の時に寝室のホコリを採取していただきました。ホコリの中のダニの量とダニの感作の関係を検討しました。

その結果、生後3か月時のホコリの中のダニの量が1歳、2歳でのダニ感作に関連し、また6か月の時に湿疹があると少ない量のダニでも感作されることがわかりました(下図)。

この結果は、乳児期に湿疹があるお子さんは掃除をしてホコリの中のダニを減らすほうが良いことを示唆しています。

 
今後の解析

●喉の細菌についてはまだその理由は明らかではありませんが、ある種の菌が生後1か月についていると1年以内のゼイゼイが多いことがわかりました。しかし、これが喘息と関連するかは3歳以降の情報が得られてからの解析となります。

●腸内細菌叢とアレルギーの関連が注目されており、理化学研究所との共同研究で1歳までの便を用いての腸内細菌叢の解析を予定しています。

●母乳中の免疫活性物質がアトピー性皮膚炎の発症に関連していることは、この研究の前の研究で解明されましたが、本研究でも調査する予定です。また、母乳中のビタミンや抗酸化物質も今年度中に解析予定です。臍帯の化学物質の測定は1~2年の間に行う予定です。

●唾液や尿の測定は予算や測定する物質の決定などから、しばらく後になると思います。

●ヒト化マウスは理化学研究所で鋭意作成中ですが、実際にアレルギーの解析に使えるようになるのにはもう少し時間がかかりそうです。

イラスト
お問い合わせ
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このように参加者の方からご提供いただいたアンケートや検体で、アトピー性皮膚炎、卵白感作、ダニ感作に関連する因子がわかってきました。ご協力いただいた参加者の方に、心から感謝申し上げます。アレルギー性鼻炎や喘息の多くは2歳過ぎから小学校に入るくらいまでに起こってきます。したがって、アレルギー性鼻炎、スギ花粉症、喘息などに関連する因子を解析するために、アレルギー疾患の追跡調査が必要と思われます。今後も皆様へは研究結果をこのHPで定期的にお知らせいたしますが、アレルギー追跡調査について是非ともご協力いただけますようにお願い申し上げます。

ご不明の点あれば遠慮なく下記に問い合わせください。

 

【お問い合わせ】

下条直樹 千葉大学大学院医学研究院小児病態学

〒260-8670 千葉市中央区亥鼻1-8-1

e-mail: chibakids@chiba-u.jp

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